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関ヶ原の戦いの陣跡に残る「遺構」

関ヶ原古戦場に点在する陣跡碑

  慶長五年九月十五日(西暦1600年10月21日)に行われた関ヶ原の戦いの主戦場は、現在の関ケ原町一帯です。

 朝から立ち込めていた霧がようやく晴れかけた午前八時、鶴翼の陣で待ち受ける西軍に対し、東軍が攻め込む形で、合戦の火蓋が切って落とされました。

 主だった武将が布陣した地点は概ね明らかになっていて、該当する地点には、明治三十九年建立の「陣跡碑」を見ることができます(但し、細川忠興陣跡碑は、2013年の建立です)。

 なお、陣跡碑の中には、設置後、圃場整備等の事情で移動を止む無くされたものもあるようです。例えば、現在、字福井にある松平忠吉井伊直政陣跡碑には「字茨原」と彫り込まれていますが、これは工場誘致のため移設されたことによります。

 また、昭和六年に国の史跡に定められた「開戦地」「決戦地」「家康最初陣地」「石田三成陣地」「岡山烽火場」「徳川家康最後陣地」「東首塚」「西首塚」「大谷吉隆(吉継)墓」「大谷吉隆(吉継)陣跡」には、国史跡指定碑が建立されています。

 

関ヶ原の戦いに縁ある遺構は?

 しかし、城跡という紛うこと無き遺構が残る攻城戦(籠城戦)とは異なり、野戦の古戦場では、大体の布陣地点は推測できても、実際の遺構はほとんど残されていないのが現実です。

 関ヶ原の戦いにおいても、その原則は変わりません。石田三成が布陣した笹尾山には、当時の状況を再現する「馬防柵」が設けられていますが、当時の遺構がどの程度残っているかはあまりはっきりしていないようです。

 

その1 松尾山城

 そんな中で、はっきり遺構として観察できるのが、小早川秀秋が布陣した松尾山です。松尾山は関ヶ原の戦いの主戦場となった関ヶ原の盆地の南にある小山ですが、その山頂一帯は、戦国時代のある時期、「境目の城」として機能していました。

 松尾山の山頂には、上述した明治三十九年建立の小早川秀秋陣跡碑がすっくと建っていますが、山頂の周囲は土塁に囲まれ、南側には敵の侵入を防ぐための枡形虎口も見ることができます。

 実は、松尾山城はさらに複雑な構造を持っていることが分かっていて、縄張り図を掲載したガイドブックも出版されています。

 

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 ただ、松尾山城は、関ヶ原の戦いのために築かれた砦ではありません。以前からあった山城を整備して活用したというのが実際のところです。

 

その2 毛利秀元陣跡

 それでは、関ヶ原の戦いのために急遽築いた砦の遺構は残されているのでしょうか。

 一つは、関ヶ原町のお隣、垂井町にある南宮山の毛利秀元陣跡があります。かなり分かりにくい状態になっていますが、土塁や堅堀、土橋、虎口などの遺構を観察することができます。しかし、秀元は実際の戦闘には参加せず、もちろん、この陣地が戦いの場になることもありませんでした。

 

その3 そして本命 大谷吉継陣跡の堀跡

 ところが、灯台下暗し灯台下暗し、と言いましょうか。実は、関ヶ原の戦いの中でも最も激しい戦闘が行われた場所に、遺構が残されているのです。

 上掲の「大谷吉隆(吉継)陣跡碑」のすぐ側。これも既述の「大谷吉隆(吉継)墓」から南進する山道を「大谷吉隆(吉継)陣跡碑」まで辿ったところで、左右に幅1メートルほどの溝が伸びています。ちょっと見ると、踏み固められた杣道のようですが、これが大谷吉継が築かせた堀跡です。もちろん、当時はもっと深く掘られていたのでしょうが、四百年の年月が、穏やかな小道のような見た目に変えてしまいました。

 大谷吉継と言えば、関ヶ原の戦いに縁ある武将の中でもトップクラスの人気を誇る義将です。今は静かな樹林に囲まれたこの地に立って、当時の吉継の思いに心を凝らして見るのも意味のあることかも知れません。

 

 なお、ここからは、寝返りによって西軍の敗戦を決定づけた小早川秀秋の布陣した松尾山がすぐ間近に眺められます。 当時は山頂一帯に犇めく一万五千の小早川勢の動向が手に取るように察知できたことでしょう。

 吉継らが奮戦しているにも関わらず、静観するばかりの小早川。挙句にこちらに向かって攻め込んでくることを知った時の吉継の心情は…?

 想定内だったとは言え、ショックは大きかったに違いありません。しかも、裏切りは連鎖し、それまで動かなかった脇坂安治、小川祐忠、赤座直保、朽木元綱の四隊までもが西軍を裏切り、大谷隊に攻め込んだため、さすがの大谷隊も支え切れずに壊滅。ここに西軍は一挙に敗走することになりました…。

 

 それでは、今日はこの辺で擱筆させていただきます。

 最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

 

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