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関ヶ原の戦い 石田三成の敗走路を推理する

関ヶ原の戦いの舞台は…

 関ヶ原の戦いと言えば、徳川家康(東軍)と石田三成(西軍)との間で争われた天下分け目の合戦として知られています。

 大詰めの舞台となったのは、現在の岐阜県関ケ原町。もちろん、それまでにも各地でさまざまな戦があって、広義の「関ヶ原の戦い」は、それら全部を含む戦乱とも考えられますが、何と言っても、当地で最終的に雌雄を決したことは間違いありません。

 僕は、関ケ原町からほど近い大垣市に住んでいて、ある時期、集中的に関ケ原町及びその周辺の戦跡を訪ね歩いたことがありますので、その辺りのことを何回かに分けて綴ってみたいと思います。

 関ヶ原の戦いを巡っては、それこそ数知れぬ逸話が言い伝えられていて、中には真偽のほどが不確かなものもありますが、この合戦に参加した各武将の立場や背景、人間関係等への理解がある程度深まってくると、ことの真偽とは別に、不思議と心揺さぶられるエピソードが少なくありません。

 個人的には、大谷吉継・平塚為広・戸田勝成の奮戦や、宇喜多秀家八丈島流罪後のエピソード、小西行長キリシタン大名らしい最期などが特に心に残ります。

 

関ヶ原の戦いの最終局面

 しかし、何といっても気になるのは、石田三成の敗走した経路です。三成は関ヶ原における敗戦の六日後、近江伊香郡古橋村に潜んでいるところを捕縛されます。しかし、厳しい追っ手の目を逃れ、どうやって古橋村までたどり着いたのかは謎のままです。

 更に言うなら、この時点の三成にはまだ、大坂城に戻って態勢を立て直す可能性が残されていました。歴史に「もしも」はありませんが、彼はどんなルートで大坂城に向かおうとしていたのでしょうか。こちらの謎にもつい想像を逞しくしてしまいます。

 ともかく、関ヶ原の戦いの終盤の状況から見ていきましょう。松尾山に布陣していた小早川秀秋の寝返りにより、大谷隊が壊滅、西軍最大の兵力を誇った宇喜多隊、宇喜多隊に隣していた小西隊が相次いで壊滅し、宇喜多秀家小西行長関ヶ原北方の山中に敗走します。

 笹尾山に布陣していた石田隊も、東軍の猛攻を支え切れず壊滅し、三成もまた、笹尾山の背後に連なる伊吹山の前山に逃れたと考えられます。

 なお、三成が街道沿いに敗走した可能性は低いでしょう。現実に、秀家や行長も笹尾山背後の山中に逃げ込んでいますし、街道沿いの村々には、三成捕縛の功を狙う東軍の追っ手が溢れていました。実際、容赦ない探索の手が伸びたことが、地元の伝承として残されています。

 

石田三成の敗走路は修験者の道か?

 実は、関ヶ原の西隣の伊吹山南麓は、すでに石田三成(石田氏)の領地でした。そして、その山中には、鎖のように山岳寺院が点在していました。当然、そこには山伏たちの修行の道が縦横につけられていました。

 また、これらの山岳寺院は、戦国時代、京極氏の山城として機能していた時期もありました。戦略的な意味での間道も整っていたことは確実です。三成が地の利を生かして知る人ぞ知るこれらのルートを利用した可能性は極めて高いでしょう。

 恐らく、三成はこの間道を辿って伊吹山の西麓まで行き、平野部には一切出ることなく、かつて浅井長政の居城(小谷城)があった小谷山乃至その北方の山田山まで達した後、そこから北へ伸びる尾根道を伝って古橋村へと逃げのびたものと思われます。

 実は、古橋村周辺もまた山岳信仰が盛んな地であり、伊吹山同様、修行の道が山中に張り巡らされていました。

 これらの山岳寺院と三成の関係は彼の幼少期にまで遡ります。三成の父、正継は、幼い三成の学びの場として、こうした寺院を選びました。具体的にどの寺院であったか、については大きく二説に分かれます。

 一つは、観音寺説。観音寺は石田氏の本拠地(現在の石田町)から山一つ越えただけの近場に位置しています。しかも、この観音寺は伊吹山南麓の山岳寺院が移ってきた寺なのです。

 もう一つは、法華寺説。法華寺は、何と三成が最終的に隠れ処として選んだ古橋村にあった山岳寺院です。

 どちらの説を採ったとしても、三成と山岳寺院との密接な関係を推し量る状況証拠としては十分でしょう。

 

石田三成、幻の大坂ルートは?

 古橋村は琵琶湖北辺。しかし、琵琶湖東岸にある石田氏の居城、佐和山城はすでに東軍の手に落ちています。したがって、琵琶湖東岸のルートは現実的ではありません。残るは湖西の山中か、あるいは夜の闇をついて舟で琵琶湖を突っ切るか、です。

 古橋村からは一投足で琵琶湖に着きます。琵琶湖北岸は入り組んだ湖岸が続き、現在でも、まるで隠れているかのような湊がたくさんあります。

 手引きする人物さえいれば、湖上ルートが最も現実的かも知れません。伝承もいくつかあるようです。更に調べを進めてみたいところです。

 

【補記】今回の記事は別名義にて他所で発表した内容を全面的に書き直したものです。

 

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