夕暮れフェルマータ

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テンカラ釣り 記録より記憶に残るイワナ・アマゴ・ヤマメのヒットシーン【イワナ編】

 テンカラ釣師の自慢話 〜 まずはタックル紹介

 今回は、過去の釣行から、印象的だったヒットシーンを取り上げて書いてみたいと思います。要するに自慢話なんですが、多少なりとも皆様の釣行時の参考になるような記述を心がけますので、どうかお付き合いください。

 本題に入る前に、僕が普段使用しているタックルをご紹介しておきますね。

 

 竿3.3〜3.6mのテンカラ専用竿ラインフロロカーボンの4号+3号で4m(渓相によって3〜4.5mくらいの範囲で使い分ける)。その先に目印として2号の蛍光ラインを20cmほどつけています。

 また、ハリスは、鮎釣り用の0.8〜1号あるいはフライフィッシング用のティペット5〜4Xです。毛鉤は自作しますが、フックティムコのフライフィッシング用のフックを使用することが多いです。

 

テンカラ釣師の自慢話 〜 ナルミズ沢のイワナ編 

 さて、まずはイワナ。見えている魚は釣れない、ということがよく言われますが、実際はそうでもありません。むしろ、普段は渓流魚もけっこう寛いでいるので、こちらの気配を悟られないように振り込めば、何の疑いもなく、ゆっくり毛鉤を咥えることが多いです。

 また、ある程度の大きさがある淵では、魚の大きさによって序列があり、最も餌を摂取しやすい流れ込みには、その淵で最も力のある魚が定位していることがほとんどです。そのため、そうしたポイントでは釣り方に配慮が必要です。

 淵の開きから釣っていくのがセオリーですが、かけ損ねたりして、開きの魚を追い込んでしまうと、その淵にいる全ての魚を釣り上げる機会を逸することにもなりかねません。理屈では、手前から丁寧に釣っていく、ということになりますが、いつも思った通りになるわけではありませんから、状況が許せば、最初の一投から最も良いポイント(大物がついていそうなポイント)を狙うという選択肢もあり得ます。

 ここでご紹介するのもそういう釣り方をしたケースです。

 

 宝川源流のナルミズ沢を釣行した際、とある細長い淵に行き当たりました。岩盤が発達した地形で、淵の流れ込みまで、右岸(上流に向かって左側)の岩を伝っていくことができました。淵から距離を取りつつ、水面を観察しながら進んでいくと、喉のように細くなった流れ込みの直下に魚影を発見しました。水面は波立ち、はっきりと視認することはできませんでしたが、時折、ゆらりと左右に揺れるので、それと分かりました。

 定位している位置からしても、この淵の主であることは間違いなさそうです。僕は岩陰から慎重に毛鉤を振り込みました。一投目は力が入りすぎて、少し右に行きました。魚影はゆらりと動きましたが、すぐ元の位置に戻ります。二投目。今度は弱すぎました。毛鉤は何事もなく、魚影の左側を流れ去りました。

 三投目。また右側です。しかし、一投目よりは流れの筋にうまく乗ったようです。すると、魚影がゆらりと動き、ぼんやり見えていた毛鉤の影がスッと消えました。敢えて遅合わせで竿を上げると、ガクッと根掛かりのような衝撃があり、続いて魚影が一気に下流へ走りました。僕は、竿をたわめながら、水際に近づきました。魚影は淵の真ん中で右に左に暴れ回ります。魚の動きに合わせて竿を左右に揺らしつつ、徐々に立てていきます。

 テンカラ釣りの場合、取り込み前にラインを掴む際に魚をバラすことが多いので、慎重に対処します。口を開けた魚の顔が見えました。諦めたように水面を引きずられてきます。アメマス系の銀鱗が眩しい尺上の見事な魚でした。

 この時は、毛鉤を揺らして誘うことはせず、ナチュラルドリフトに徹しました。それでも、流れの筋を掴み切れないうちは、魚に咥えさせることはできませんでした。

 状況にもよりますが、餌は次から次へと流れてくるので、魚としてもわざわざ定位している場所から大きく離れて餌を追うことはしないのでしょう。でも、そういう時は、食餌に集中しているとも言え、うまく流せば確実に咥えさせることができます。

 こうしたケースで、早合わせは禁物です。しばしこらえて魚がしっかり毛鉤を咥えるまで待ちましょう。魚もゆっくり咥えますから。そして、合わせ切れしないよう、コンパクトに合わせて確実に鉤がかりさせます。

 

釣れなかった超大物の話 〜 小室川谷の大岩魚

 ところで、淵では、魚の大きさによって序列があり、定位する場所も序列による、と書きましたが、中にはその序列からはみ出した超大物もいる、ということを、どこかで読んだことがあります(どの本に書かれていたのか失念してしまいました。すみません)。

 それを実際に見たのが、多摩川源流の小室川谷でした。小室川谷は、渓流釣りのみならず、沢登りでも人気の秀渓です。遡行する間には、S字峡、小室の淵、大滝などの山場がありますが、ここでご紹介するのは、小室の淵に至る少し手前のこじんまりとした淵です。調子よく釣り上がっていた僕は、セオリー通り、流れ出しの開きに毛鉤を落とそうと竿を構えました。

 と、浅場になった開きの少し先の深みをクロマグロのような魚体が旋回したのが見えたのです。僕は気圧されて身動きが取れなくなりました。その時のハリスは0.8号。もし、鉤がかりしても間違いなく糸を切られるサイズです。

 仕掛けを代えるか、どうするか、逡巡しているうちに、また例のクロマグロが、先刻と同じように太い横腹を見せて旋回していきました。

 明らかに、回遊しています。もはや序列から超越した超大物。そして、三度目の旋回。結局、僕はそのままの仕掛けで毛鉤を振り込みました。しかし、クロマグロの影は全く反応せず、もう二度とその影を現すことはありませんでした。

 水中の魚は大きく見えることが多いのですが、それにしても2尺(約60センチ)は優に超えていたと思います。あれだけ釣り人に攻められながら、そこまで生き残ったのには、やはり理由があるのでしょう。また、その上流に黒々と広がる小室の淵にはどんな大物が潜んでいるのか、恐ろしい気がしました。

 

 いやはや、釣師が自慢話を始めると止まりませんね。書き始める前は、ヤマメ編・アマゴ編まで考えていたんですが、イワナ編だけでもずいぶんな長文になってしまいましたので、今日はこの辺で擱筆します。他編はまた次の機会に。

 最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

 

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