夕暮れフェルマータ

 人生のマジックアワーに振り返る好きな本とか自然とか…。

テンカラ師が見たカゲロウの羽化とスーパーハッチ

今回の主役は、カゲロウ

 前回は、オオムラサキとの貴重な邂逅について書きました。今回も引き続き、昆虫との出会いについて書いてみます。オオムラサキの方は、準絶滅危惧種の指定を受けているということで、個体数そのものが少ないのですが、今回取り上げるカゲロウについては、そういう問題はありません。もちろん、多くの種類がいますので、専門的に詳しく調べれば、棲息環境の変化等で数を減らしているものもいるかも知れませんが、僕は分かりません。

 むしろ、渓流釣り、しかも、カゲロウを中心とする虫を模した毛鉤を用いるテンカラ釣りオンリーの釣師である僕には、大変馴染みの深い虫であると言えます。

 渓を釣り上がりながら、ちょっと一休みして倒木に腰掛け、ふと横を見ると、透き通った羽をフルフルと震わせたカゲロウが止まっていたりします。

 

原色川虫図鑑 成虫編: カゲロウ・カワゲラ・トビケラ

 カゲロウその他の川虫の生態を詳しく解説した図鑑を紹介しておきます。表紙の写真を見ていただくだけでも、カゲロウの形態や棲息環境についてイメージできるかと思います。

 

カゲロウたちのスーパーハッチ

 夕方を中心に、彼らが一斉に羽化を始めると、渓は幻想的な光景に変わります。しきりに羽を羽ばたかせ、数メートルほども上空に浮かび上がったかと思うと、ふと力を抜いて、地球の重力に素直に従いながら、スーッと降りてくる。

 あんなに小さな虫にも、やはり重さというものはあって、彼らもまた間違いなく、この地球で重力に支配されながら生きているんだな、と当たり前のことを再確認したりします。

 しかも、その上下する飛翔を何百、何千というカゲロウたちが一斉に行うのです。それが逆光の中であったりすると、本当に美しいものです。

 

カゲロウの羽化の3タイプ & 釣師の邪念

 ところが、です。

 僕はつい最近まで、カゲロウが羽化するところをきちんと観察したことがありませんでした。幼虫なら、餌には使用しないまでも、濡れた石の裏側とか、水底に積もった枯葉とか、そういった場所でちょくちょく見かけていましたし、脱皮した後の脱け殻も、空蝉以上によく見つけていたのですが…。

 カゲロウは、チョウやカブトムシと同じく、幼虫から成虫へと変態するのですが、鳥類でよく見かける蛹(サナギ)の状態を経ることはありません。幼虫から直接、成虫になります。いや、この言い方では若干正確性を欠きますね。

 カゲロウは、幼虫から羽化すると、いったん亜成虫になります。亜成虫の形態は成虫そっくりです。亜成虫は羽化後、ほぼ24時間ほどで再び羽化を行い、生殖能力を持った成虫になるのです。

 また、幼虫から亜成虫に羽化する方法には大きく分けて3タイプあります。水中羽化・水面羽化・陸上羽化です。

 水中羽化は、文字通り、水中で羽化し、羽化した亜成虫は羽を閉じた状態で、水面まで浮上し、水面に出ると一気に羽を開いて飛び立ちます。

 水面羽化の場合は、幼虫の状態で水面まで浮かび上がり、水面を流れながら、羽化を行います。羽化すると、これもパッと水面を離れて飛び上がります。

 陸上羽化では、幼虫が岸べの石などに這い上がり、そこで羽化します。

 釣師は魚を釣り上げることばかりに血眼になり、せっかく素晴らしい自然の中に入っても、それを味わうことをしない、とはしばしば聞かれる指摘です。僕も耳が痛いです。カゲロウの羽化なんて、本当に観察しようと思ったら、いくらでも機会はあったはずです。タイミングに考慮した上で、しばし竿を置き、岸辺でじっとしていれば、すぐに見ることができたでしょう。

 

ついに見た! カゲロウの羽化

 しかし、実際にカゲロウの羽化を初めて観察できたのは、ちょっと偵察するつもりで、半端な時間に近くの渓まで出かけた時でした。竿を持っていかなかったので、釣欲に捕らわれることなく、静かな気持ちで流れに向き合うことができました。

 それは、小さなダム湖の流れ込み。上流にはささやかな葦原が広がり、流れはその間をゆったりと下ってきます。ふと見ると、水面からしきりに何かが飛び立っています。じっと見ていると、カゲロウでした。魔法か手品の様に、不意に水面に現われてはパッと飛び立つのです。

 しかし、更に観察を続けると、水中から、これもしきりにスーッと浮かび上がってくるものがあります。その一つに注目していると、それはポッと水面に浮かび上がると、そのまま流れに流されながら、数メートルほど下流でパッとカゲロウの姿になって飛び立ったのです。

 もうお分かりでしょう。僕が見たのは、水面で羽化するタイプのカゲロウの羽化でした。水中羽化のカゲロウも混じっていたかも知れませんが、今となっては何とも言えません。また、何というカゲロウだったかも分かりません。比較的小型のカゲロウだったことは間違いありません。後に図鑑で調べたところ、コカゲロウの仲間に水面羽化をするものが多いとの記載がありました。恐らく、その通りなのでしょう。

 

スーパーハッチ & イブニングライズ

 カゲロウが一斉に羽化することをスーパーハッチといい、毛鉤釣りにはまたとない好機とされています。フライフィッシングをする方は特にそうですが、夕方によく起こるスーパーハッチに伴う渓流魚たちのイブニングライズを狙って、その時間帯に最も良いポイントで釣りができるよう、うまく釣り上がるのも、一つのテクニックです。

  今回は、竿を持たなかったことで、初めて目が開かれました。今後は、竿を持っていても、こうした発見ができるような心の余裕を持った「真の大人」になりたいものです(笑)。

 

  それでは、この辺で擱筆致します。けっこうな長文になりました。最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

 

yuugurefermata.hateblo.jp