夕暮れフェルマータ

 人生のマジックアワーに振り返る好きな本とか自然とか…。

鳥の俳句・その壱 / 季語「さえずり」「大瑠璃」

囀りと地鳴き 

 鳥の鳴き声は、大きく2種類に分けられます。繁殖期に、縄張りを宣言し、雌に求愛するための「囀(さえず)り」と、それ以外のコミュニケーションツールとしての「地鳴き」です。

 日本人に最も馴染みの深い囀りは、ウグイスの「ホーホケキョ」でしょう。もちろん、実際に「ホーホケキョ」と鳴いているわけではないのですが、ウグイスの場合は、この「法華経」という聞き做し*1があまりにも浸透しすぎて、そう鳴いているとしか思えません(笑)。

 ちなみに、ウグイスは留鳥なので、繁殖期以外の鳴き声も比較的多く耳にすることができます。ウグイスの場合はこれを「笹鳴き」といい、俳句では冬の季語になっています。文字通り、藪の中で「チャッ、チャッ」と地味に鳴きます。

 

水原秋桜子の一句「この沢や…」

 一方、夏鳥は、春から初夏にかけて、繁殖のために南方から渡ってくるだけに、ほとんど囀りしか印象に残らない場合が多いですね。特に、囀りが美しい(姿も負けじと美しいですが)オオルリなどは、地鳴きを聞いたことのない方も少なくないのではないでしょうか。

 実際、オオルリを詠んだ俳句は、その美しい囀りを詠み込んでいるか、直接表現していなくても、囀っている姿をイメージさせるものがほとんどです。著名な作品としては、水原秋桜子の、

 この沢やいま大瑠璃鳥(オオルリ)のこゑひとつ

 があります。

 僕はよく源流で毛鉤釣りを楽しむのですが、新緑の森に囲まれた明るい奈落の底にいると、大袈裟でなく、オオルリの囀りが空から降ってくるように感じることがよくあります。

 上掲の一句は、そんな実景を、季語としての「大瑠璃」の本義にまで高めた秀作と言えるでしょう。

f:id:yugurelab:20170522023637j:plain

 オオルリの幼鳥です。写真はCCOの素材画像をお借りしています。

 

季語「囀り」と「大瑠璃(鳥)」の季節の相違

 ちなみに、季語でいうと「囀り」は春、「大瑠璃(鳥)」は夏になります。

 夏鳥としてのオオルリの飛来が四月末から五月にかけてであり、また季語の分類が基本的に旧暦に沿ったものであることを考え合わせると、この季節の相違は、却って我々日本人の繊細な季節感の表れのようで、ちょっと自画自賛したくなりますね。

 

yuugurefermata.hateblo.jp

 

*1:聞きなし。鳥の囀りなどを人間の言葉に当てはめて表現すること。