夕暮れフェルマータ

 人生のマジックアワーに振り返る好きな本とか自然とか…。

雅語としての「鳰」/ カイツブリの血液型占い?

和歌・俳諧に見る鳰(=カイツブリ

 カイツブリはその古名を「鳰=にお(ニホ)」あるいは「鳰鳥(におどり)」と言い、遠く『万葉集』の時代から、繰り返し歌に詠まれてきました。枕詞「鳰鳥の」として用いられる例も多々あります*1

 また「鳰の海」は琵琶湖の古名として知られ、カイツブリ滋賀県の県鳥にも指定されています。

 俳諧・俳句では、留鳥ながら冬の季語。冬季の方がその姿を見つけやすいから、とも言われますが、同じく留鳥の鴛鴦(オシドリ)同様、冬鳥であるカモ類に準じた可能性もあるのではないかと、これは僕の個人的見解です。

 一方「鳰の浮巣」は夏の季語になっています。カイツブリは夏季、葦間などの水上に営巣するのですが、それを「鳰の浮巣」と呼び、伝統的な和歌や連歌においては、寄る辺ない哀れなものの象徴とされてきました。

 「鳰の浮巣」を詠んだ発句(今でいう「俳句」)と言えば、松尾芭蕉の、

 五月雨に鳰の浮巣を見に行(ゆか)む

 がよく知られています。しかし、この作品の場合は、一句の情景や情緒をより明確に規定している「五月雨」をもって季語とすべきでしょう。

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カイツブリ(夏羽)。見た目から雌雄を判断するのは難しい。写真は CCOの素材画像をお借りしました。

 

カイツブリにも血液型ってあるのかしら?

 ところで、実際のカイツブリはなかなかの剽軽者です。例年、自宅からほど近い杭瀬川に営巣する番(つがい)が複数いるのですが、番によってその行動にも違いがあります。

 例えばこんな感じです。

 Aは慎重で生真面目。ちょっと巣を離れる時でも、水草で丁寧に浮巣の卵を隠します。

 一方、Bは大胆で大雑把。巣を離れる時だって卵を隠そうともしません。とは言っても、卵(=我が子)を大事にしていないわけではなく、僕がわざと巣に近づく仕草を見せると、遠くの方から必死に泳ぎ戻ってきます。

 血液型占いを信じるわけではありませんが、AA型タイプ、BBタイプとでも言ったところでしょうか?

 さて、カイツブリの雛鳥には、大胆な縞模様が入っています。卵から孵ってしばらくの間は、さすがに水に潜るのは難しいようで、浮巣の周囲をくるくる泳ぎまわっているのをよく見かけます。また、隙あらば親鳥の背中によじ登ろうとするのもこの時期の特徴です。

 甘えたい盛りの雛鳥たちを背中に乗せて、颯爽と泳ぐ親鳥は、その表情もどことなく誇らしげに見えます。

 今年もまた、カイツブリ恋の季節がやってきました。今夏は、どんなカップルが誕生するのでしょうか。今からドキドキ、ワクワクです。

 

ここで一句

 それでは最後に、春になって元気に泳ぎだしたカイツブリを詠んだ拙句をご紹介して擱筆させていただきます。 

 鳰の眼に春の疾風(はやて)の波しぶき*2

*1:鳰鳥(カイツブリ)に、水に潜って魚を獲る習性があることから、「かづ(潜)く」「かづしか(葛飾)」、また「なづさふ(=水に浮かぶ意)」「おきなが(息長)」「ならびゐ(並び居)」などにかかります。

*2:この句の場合、季語はやや変則的ですが「春疾風」。季節はもちろん春になります。