夕暮れフェルマータ

 人生のマジックアワーに振り返る好きな本とか自然とか…。

野鳥 一期一会/養老山地北縁のヤマセミ篇

ヤマセミと出会った特別な場所

 初めての出会いは今須川。今須川は、滋賀県岐阜県の県境となる五僧峠付近を水源とする牧田川の支流です。壬申の乱の舞台としても知られる藤古川との合流点から上流は、しばらくの間は深い峡谷を形成し、人の気配もほとんどありません。

 峡谷の出口付近は特に大きく蛇行していますが、流れを突き上げるように張り出したわずかな平地には、手入れの行き届いた水田が作られています。蛇行する峡谷を渡り返しながら走る県道から、細い農道が急勾配で下っており、軽自動車を乗り入れれば、そこは世間と隔絶した小空間。手軽に深山幽谷の雰囲気を味わうことが可能です。

 そんな場所ですから、それはヤマセミだって顔を出します。靄の立ち込めた流れの彼方から幻のように立ち現れ、河原に佇む僕に気づくと、フワリと大きく羽ばたいて、再び靄の彼方へ消えていきました。

 

ヤマセミの飛翔スタイル

 実際に会ったヤマセミは、思った以上に大柄で、トレードマークの冠羽もはっきり視認できました。何より特徴的だったのはその飛翔の仕方です。これがカワセミだったら、目にも止まらぬ速さで羽ばたいて、一瞬のうちに飛び去りますが、ヤマセミは違います。大きく、ゆったりと羽ばたきながら、ふわふわと飛んでいくのです。

 今須川の周辺では、その後も何度かヤマセミに会うことができました。番で飛ぶのも見ましたし、かなりの高空を四羽ほどが連なって飛んでいるのを見たこともあります。そう言えば、この付近にはオオタカも棲息していて、まさに威風堂々といった雰囲気で対岸の樹の枝に止まっているのをよく目にします。

 近くを名神高速道路が走り、ゴルフ場や採石場なども点在してはいますが、それでもこんなに豊かな生態系が保たれているんですね。声高に自然保護を叫ぶつもりはありませんが、我々の暮らしのすぐ近くにある自然だからこそ、これからも永く守っていきたいと思います。

 

  それでは最後に、ヤマセミを主人公にした素晴らしい写真集をご紹介しておきましょう。作者の島田忠さんは、野鳥を中心として、数々の優れた写真集を発表されている方です。

凍る嘴: 厳冬のハンター[ヤマセミ]

凍る嘴: 厳冬のハンター[ヤマセミ]

  

yuugurefermata.hateblo.jp