夕暮れフェルマータ

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与謝蕪村の一句鑑賞 その弐

 ほとゝぎす平安城を筋違(すぢかひ)に

 時鳥(ほととぎす)は、『万葉集』の時代から繰り返し古歌に詠まれてきました。 その雅なイメージと「平安城(=平安京)」がよく響きあって、俯瞰された京の町並にうっすらと紗をかけたような効果を上げています。

 『新編 日本文学全集72 近世俳句俳文全集』によると、この句の初案は「筋違に上京(かみぎょう)過ぎぬほとゝぎす」であろうとのこと。『広辞苑』によると、「上京」とは「京都北部の御所を中心とする一帯の地」を言うそうですが、初案の「上京」から「平安城」へと大きく視野を広げたことで、碁盤の目のような京の町並を、鋭い鳴き声と共に斜めに突っ切っていく時鳥のイメージがくっきりと描き出されました。

 あるいは、蕪村は時鳥の声を聞いたのみで、その姿は見ていなかったかも知れません。だとすれば、「平安城を筋違に」貫いていったのは、時鳥の声そのものだということになります。作者の自在なイメージの羽ばたきが、一句に時間的・空間的な広がりをもたらし、実景以上に美しい風景を生み出しているようです。

 

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