夕暮れフェルマータ

 人生のマジックアワーに振り返る好きな本とか自然とか…。

蝶との遭遇/アサギマダラの羽色の秘密、その他

幼き日のアイドル、アオスジアゲハ

 蝶の羽の文様にはそれぞれにオリジナリティーがあって、ヒトの端くれである僕の美意識を刺激して止みません。振り返ると、幼少の頃、アオスジアゲハのコンパクトながらスマートなスタイルと、「アオスジ」のメカニックなデザインに特別な好尚を持っていたことを思い出します。

 沢登りや源流での毛鉤釣りを始めるまでは、蝶に対して特に注目していたとは言いがたく、識別できる種類も、モンシロチョウ、モンキチョウベニシジミナミアゲハ、キアゲハ、アオスジアゲハぐらいだったと思うのですが、とある林道の林縁からふわりと飛び立ったアサギマダラの麗姿に魅了されてから、一気に多くの種類を識別できるようになりました。

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アオスジアゲハ。メカニカルかつワイルドな姿が魅力的です。

 

アサギマダラの羽根色の秘密

 その時に見たアサギマダラの羽色は実に美しく、背後に広がる初夏の青空が透いて見えるかのようでした。写真では分かりづらいのですが、アサギマダラの羽の白く見える部分は、よく見ると薄い青色(浅葱色)をしていることを、図鑑で読んで知りました。とすると、青空が透けていると思ったのは、羽の浅葱色を見誤ったものだったのでしょうか…。

 ところが、そう思った矢先、ウィキペディアに、問題の部分が半透明であり、かつ鱗粉も少ないと記述されているのを見つけました。これで、疑問は振り出しに戻ってしまいました。こうなったら、物置の奥にしまいこんだ捕虫網を持ち出して、ホンモノを捕獲して確認してみるしかないのかも知れません。

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アザミの花にとまるアサギマダラ。この写真だと、ほのかに翅の浅葱色が見て取れます。

 

カラスアゲハが誘う白昼夢の世界

 蝶については書き留めておきたいことがたくさんあります。多摩川の支流、秋川の支沢である小坂志川沿いの林道で出会ったカラスアゲハの集団吸水もその一つです。

 あれはやはり初夏のことでした。杉林の暗い緑陰を歩きながら、ふと顔を上げると、白っぽく乾いた林道を横切るように黒い帯が見え、その周辺に黒い雲母のような光がチラチラと動いているのが見えました。

 あれはなんだろう、と思いながら近づくと、黒い帯に見えたのは林道脇の崖から流れ出た湧水であり、チラチラと光る黒い影は蝶なのでした。その数およそ二十頭。歩調を緩めて近づくと、一斉に飛び立ちます。それは実に幻想的な光景でした。緑がかった光沢を持つ黒い羽の乱舞は、まるでネガフィルムで映し出された世界の様。最後の一頭が杉林の樹冠の彼方に消えてしまうと、僕は、ポツンとただ一人、世界から取り残されたような気分になりました。

 何れにしても、谷筋で出会う蝶には、人を異界へと誘い込もうとする魔力を感じます。これまでは踏みとどまってきましたが、いつか彼らの誘いに乗ってみようか、と思う自分がいるのも確かです。

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カラスアゲハ。近縁のミヤマカラスアゲハとは体の大きさや翅の色合いが微妙に異なります。

 

                         注:掲載の写真は全てCCOの画像を使用しています。