夕暮れフェルマータ

 人生のマジックアワーに振り返る好きな本とか自然とか…。

絵本『かわせみのマルタン』とバードウォッチング

 

バードウォッチングに繋がる本との出会い

 去る5月11日、三十歳を過ぎた頃からバードウォッチングを始めたことを記事に書きました。しかし、唯一例外となる鳥がいます。それはカワセミです。中国では翡翠、英名でKing Fisherと呼ばれるこの鳥には、世界各地に多くの仲間が生息しています。わが国でも、カワセミ、ヤマセミ、アカショウビンなど数種が知られていますが、やはり最もよく知られているのはカワセミでしょう。

 僕とカワセミとの出会いは幼少の頃に遡ります。と言っても、出会ったのは絵本の中のカワセミでした。その名はマルタン。そして、彼の妻となるマルチーヌです。

 『かわせみのマルタン』は、1938年にフランスで出版された絵本。わが国では1965年に福音館書店から刊行されました。その後、2003年には、翻訳を見直した上で、童話館出版から復刊されています。

 僕が読んだのはもちろん福音館書店版の方。それも初版本だったと思われます。本の内容を一言で言えば、フランスの田舎の博物誌。主役はもちろん「かわせみのマルタン」。対象となる自然やカワセミをはじめとするさまざまな生き物たちの特徴をよく捉えた美しい絵とも相俟って、幼心にも忘れがたい印象を残しました。

かわせみのマルタン

かわせみのマルタン

  • 作者: リダフォシェ,フェードルロジャンコフスキー,Lida Faucher,Feodor Rojankovsky,いしいもも
  • 出版社/メーカー: 童話館出版
  • 発売日: 2003/07
  • メディア: 大型本
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そして、本物と出会う

 本物のカワセミに出会ったのは、それから十年後のこと。自転車通学の途中、小さな溜め池に打ち込まれた杭の先に止まるカワセミを見つけたのです。『かわせみのマルタン』を読んでから、繰り返しイメージを膨らませてきた通りの姿で、彼はそこにいました。

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僕は写真を撮らないので、CCOの画像をお借りしました。下嘴がオレンジ色をしているので、写真の個体は雌。雄は上下ともに黒です。

 

 しかし、再びカワセミと出会うまでには、さらに十年以上の時を必要としました。徐々に生息域を後退させていたカワセミが、再び都市近郊まで戻ってきた時期と重なったこともあるのでしょう。バードウォッチングを始めて早々、僕はカワセミとの再会を果たしたのです。

 その後は、水に飛び込んで魚を捕らえる姿やペリット*1を吐き出す瞬間など、カワセミのさまざまな生態を目の当たりにしてきました。また、ヤマセミやアカショウビンといったカワセミの仲間たちを観察する機会にも恵まれました。

 但し、ヤマセミやアカショウビンカワセミほど頻回に会うことはできません。生息域が限られる上、個体数もカワセミほど多くないからです。しかし、それだけに、出会いに至るプロセスや出会った際の状況は忘れがたい思い出にもなっています。

 

バードウォッチングの効用

 前回の記事で、バードウォッチングは一期一会だと書きました。それは本当にその通りなのですが、同時に、僕にとっては自然との通路を開く秘密の鍵でもあるようです。しかも、その鍵はいわばマスターキーで、自然へと通じる扉を見つける心の眼さえ失わなければ、いつでもどこでもどの扉でも開けることができるようなのです。

 『かわせみのマルタン』の著者であるリダさんとその夫君で同書の絵を描いたロジャンコフスキーさんに、この辺りの消息を伝えられたらなあ、と思ったりもする今日この頃です。

 

yuugurefermata.hateblo.jp

 

*1:鳥が、消化できない骨や羽毛、歯、爪などを口から吐き出したもの。カワセミの場合は魚の骨が中心となる。